トップページ >法人と個人事業主の違いについて
税理士 三島 英生 氏 大手会計事務所、上場会社(製造業)の経理部勤務を経て、 |
会計士紹介センター: 今回は、これから起業される方、現在個人事業主の方向けに「法人が良いのか?個人事業主が良いのか」 というテーマをお話いただきたいと思います。三島先生、本日はよろしくお願いします。 三島税理士: よろしくお願いします。 会計士紹介センター: ではさっそくですが、 一般的に言われている法人と個人事業主(青色申告の場合)の特徴を比較できるようにまとめましたので、 これを使用してお話を進めていきたいと思います。 |
項目 |
法人 |
個人事業(青色申告の場合) |
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経営者の給料 | ・役員報酬を毎月定額で受取る。 1.役員報酬は損金算入される。 2.役員報酬は給与所得控除 を受けることができる。ただし、 特定の特殊支配同族会社は、 損金不算入の場合がある。 |
・事業主の給与は必要経費にはならない。 |
経営者の家族 への給与 |
自・労働対価に見合う金額の給与支払いができる。 (1)損金算入される。 (2)年間所得が103万円以下なら、配偶者控除または扶養控除を受けることができる。 |
・労働対価に見合う金額の給与は、必要経費になる。(届出が必要) 1.ただし一時的な手伝いなどの日当は、必要経費にならない場合がある。 2.年間所得が103万円以下でも、配偶者控除または扶養控除を受けることはできない。 |
退職金 | ・経営者と経営者の家族へ退職金を支払うことができる。 1.生存退職金は、退職所得になり、所得税が減る。 2.死亡退職金は、みなし相続財産となるので、非課税額が大きい。 |
・事業主または事業主と同一生計内の親族へ退職金を支払うことはできない。 |
事業用資産の賃料 (経営者又はその家族所有のもの) |
・通常の額の賃料は損金になる。 1.(例) 家賃、支払利息 2.もらった方は、不動産所得、雑所得になる。 |
・事業主または事業主と同一生 計内の親族へ支払う賃料は、 必要経費にならない。 但し、その資産の所有による 費用は、必要経費になる。 |
生命保険料(経営者が被保険者のもの) | ・一定のものは、損金になる。 | ・必要経費には、ならない。 |
出張の日当 | 経営者の出張日当が損金になる。 | 事業主の出張日当は損金にならない。 |
繰越欠損金 | 7年間有効 | 3年間有効 |
消費税の免税 | 資本金1000万円未満の会社は設立後2期間、免税となる。 | 免税にならない。 |
交際費 | 一定の金額が損金不算入になる。 | 事業の遂行上必要と認められるものは全額必要経費になる。 |
外部から感じる イメージ |
企業というイメージが高い。 | 企業というイメージが低い。 |
融資 | 会社は、融資を受けやすい。(第三者保証人が不要な場合もある。) | |
決算日 | 自分で決めることができる | 12月31日が決算日になる。 |
社会保険 | 経営者や、その家族も社会保険に加入することができる。 | 中事業主と事業主の家族は国民健康保険に加入する。 |
会社設立の費用 | 30万円前後が必要 | 必要なし |
維持費など | 1.税理士事務所への料金が、個人事業よりも年15万円位高くなる。 2.利益の有無にかかわらず税金(地方税均等割)が最低でも年7万円かかる。 3.役員変更、本店の移転などの変更する場合は登記する必要があり、その費用がかかる。 |
必要なし |
会計士紹介センター:
先生、いかがでしょうか?
三島税理士:
そうですね。インタビューのはじめから、結論になってしまうのですが、上記の通りになります。 例えば、法人だと役員の給与は、経費で落として給与所得控除を受けるというのがあります。 確かにそうなのですが、役員報酬の金額は期中には変更できなくなっています。 昔は期中でも役員の給与の金額はいつでも変更ができたのですが、今はできません。 それよりもデメリットの「税理士報酬が個人事業主より法人のほうが高くなってしまう」部分が重要だと思います。
会計士紹介センター:
なるほど。個人事業主の青色申告ですと、ご自分で申告しておられる方もいますね。
三島税理士:
そうですね。あと健康保険も従業員も10人未満であれば、個人事業主の場合は入らなくてもいいですが、法人は入らないければいけません。 そして会社の維持費として利益がでていなくても法人の場合は、地方税の均等割りが最低で7万円かかります。
会計士紹介センター:
そう考えると、法人化のデメリットも目立ちますね・・・。
三島税理士:
私も実は、税理士開業した当初、お客様に法人成りを勧めていた時期がありました。 しかしそれは、本音の部分でお客さんをつかんでいたいという心理があったんです。
会計士紹介センター:
それはどういうことでしょうか?
三島税理士:
先ほど申し上げたように、法人になると、自分で決算をして申告するといいうのは、かなり難しくなります。 個人事業主であれば青色申告を自分でするというのは、そんなに難しいことではありません。 そうなると、税理士としてはお客さんが、法人化すればお仕事をいただけるというようになりますよね。
会計士紹介センター: なるほど。そこがお客さんのことを優先に、考えれていなかったということですね。 三島税理士: そうです。まじめに考えれば、顧問料も上がるし、均等割りもかかる。 長い目で見れば会社としてはお金が出て行くというパターンがあると。 お客さんのことを本当に考えたら、節税目的で法人化するのは無理があると考えています。 といいながら法人成りを勧めるケースがまったく無いわけではありません。 |
会計士紹介センター:
どういったケースでしょうか?
三島税理士:
私がいつもご説明するのは、節税だけを考えずに法人成りする。 お客様の会社が良い会社なら、取引先との取引が増えていきます。そうすると取引先からお客様の会社の 与信限度を設定するときに、個人と法人だったら、法人のほうが大きくなります。この部分がとても大きいと思います。
会計士紹介センター:
そうすると、取引先からも仕事が増えますから、かなり前向きな話ですね。
三島税理士:
そういうことです。お客様の会社が、長く商売を続けてもらって、 成長してもらうことが税理士にとっても良いことです。そのためには、 お客さんにとってメリットのあることを、本当に考えて提案しなければいけません。 私が法人成りを勧めるのは、取引先に対してイメージが良くなる。仕事が増える。 であったり、社員を雇って会社を大きくしていきたい。といった、税金面ではなく経営面でのメリットがある場合です。
会計士紹介センター:
本日は、ありがとうございました。
三島税理士:
ありがとうございました。